高校野球と確率
もうすぐ9月。今年も甲子園では夏の全国高校野球選手権大会が開催され、たくさんのドラマを魅せてもらいました。
決勝戦は球史に残る熱戦になりました。準優勝の新潟県代表日本文理高校は、最終回に6点差のビハインドをあと1点まで詰め寄る驚異的な粘りをみせました。
過去の歴史をみても、高校野球はプロ野球や大学野球に比べて、感動的なおもしろい試合が多いような気がします。それはなぜなのでしょう?今回はそれを、確率論で考えてみました。
野球のバッターにはヒットを打つ“打率”というものがありますよね。例えば天才打者イチローの日本での平均打率は3割5分くらいだそうです(メジャーでは3割3分くらい)。これは1000回打席に入ったら(四球や犠打などは除く)350回ヒットを打つということです。でもこれは見方を変えると、イチロー個人が出した数字ではなく、相手(ピッチャー)との対戦の結果現れた数字と、ここでは考えてみます。
どういうことかと言うと、イチローが、もし狙い通りの球ばかりきたとしたら、ヒットする確率は7割あると考えます(天才イチローでもいい当たりが守備の正面をついたり、たまには打ち損ねることもあるでしょう)。
対するピッチャーも当然バッターを抑えようとします。例えば全盛期(?)の松坂が、相手の狙い球を外す技術や相手の予想を上回る速球や変化球を投げて、抑えられる確率を6割とします。
さらに指数を考えます。これは環境です。雨風や味方の応援、同点の9回裏などのプレッシャーなどです。
ここでは仮に松坂が雨に弱いとして0.9(雨だと9割の力しか出せない)、9回裏味方の大歓声に燃えたイチローが1.1、緊迫した場面のプレッシャー指数は、イチロー・松坂ともに1.05とします。
まずこの環境で松坂が抑えられる確率を出してみます。0.6×0.9×1.05=0.567でした。この反対が打たれる確率ですから、1-0.567=0.433です。
次にイチローが単純にこの環境で打てる確率です。0.7×1.1×1.05=0.809でした。
いよいよ雨と大歓声の中、9回裏イチローと松坂の対戦です。この場面でイチローがヒットを打つ確率は・・・0.809×0.433=0.350=3割5分ということになります。日本の生涯打率と一緒になりました。
このように、イチロー自身の環境と相手投手の実力と環境を掛け算した結果によって、打席ごとにヒットを打てる確率は変わってくるのです。
さてここで本題の高校野球です。高校球児はプロ野球選手に比べて、技術力と精神力が劣るので、個人のもともとの打率や投手が抑えられる率が低いのに対し、環境に対する指数変動が激しくなると思われます。
Aくんはもともとの打率4割、大歓声指数1.3、プレッシャー指数1.4、対してピッチャーBくんはもともとの抑える確率4割、雨指数0.7、プレッシャー指数0.8だとします。
大歓声の同点、雨の9回裏、AくんがBくんから打てる確率は・・・(0.4×1.3×1.4)×{1-(0.4×0.7×0.8)}=0.565。かなりの確率でドラマがおこるということになりますね。
もうひとつ高校野球に関して確率の話、それは初出場校のことです。今年で91回目を迎える夏の甲子園、初出場校はフレッシュなイメージでいつも話題になります。
ところが、91回も大会を重ねると、初出場校というのがだんだんと少なくなってしまうのではないかと勝手に心配をしていました。ふたを開けてみれば今大会は13校で、ここ10年間でいちばん多かったそうです。
本当に、大会を重ねると初出場校として出場できる確率は低くなるのでしょうか?
ある県は、100校の予選会出場校があって、そのうち70校がまだ甲子園に行ったことがないとします。この県から初出場校が出る確率は・・・70%ですね。
もし今年めでたく初出場校が誕生したとすると、来年の確率は・・・69%ですね。まあほとんど変わらないです。常連校が出場すれば確率は変わりませんし、まして新設校が出来たとすると・・・、例えば3年間で初出場校が1校で、新設が2校だったとしたら、71÷102=69.6%、実際こんなもんじゃないでしょうか。余計な心配はしなくていいようです(笑)。(というより、もし初出場校がなかなか出ない県があるとしたら、校数の問題ではなく、他の理由のことが多いでしょう)
世の中で起きていることを数字に置き換えてみると、いろいろと気付かされることがわかりました。
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